この話しは父からの口伝になります。聞いたのは多分私が中学生になったばかりの頃で、新宿三光町(今の歌舞伎町一丁目)から新宿御苑前のマンション(新宿五丁目)に移ってからだった様に思います。

父は19歳で長崎を飛び出し、銀座のお店(今のCHANELにあった洋品店とBarのコラボ店「じゅりあん・それる」時代)に住み込みで働いていた20代前半の頃の話しです。一階がフランス製の衣料品を売る洋品店で、二階が喫茶Barになっていて、父は二階でバーテンをしていました。三階にあった小さな部屋が父の間借りの住居でした。

当時、店が何時に閉まっていたのかは知りません。でも昭和26~28年当時の「銀座みゆき通り」ですので、遅くまで営業していたと思われます。店が終わりグラスや食器類を洗い終わり、父は二階の広い店から、鉄板の階段を上って小さな6畳ほどの和室に向かいます。そして、何もない部屋で布団を敷いて眠りにつくのですが・・・。

深夜にゆっくりカーンカーンと音を響かせ、薄い鉄の階段を何者かが登って来る気配がしたそうです。父親が「あ、泥棒だ!」と思っていると、金縛りに遭い、全く体が動かなくなってしまったそうです。すると扉にある磨り硝子の小窓からグウッと何者かが覗き込む気配がしたそうです。動けない体に更なる恐怖が襲ったそうです。

その覗き込んだ者は扉を開けることなく、部屋に入って来たのです。気丈な父は何とか金縛りを解いて、予期せぬ訪問者と対峙しようと足掻くのですが、やはり体は動かなかったそうです。そして、黒い影は射貫くように父の顔を覗き込みながら寝ている布団の周囲をゆっ~くりと、ミシミシと音を立てて廻ったそうです。父は何とか起き上がって戦おうとしましたが、全く動くことが出来なかったそうです。

そして得体の知れない黒い影は白く浮き出た目で父を凝視しながら、布団の周りを二周ほどすると・・・、また扉の方へ向かい音も立てずにすり抜けました。磨りガラスに黒い影が一瞬映り、今度はカーンカーンと言う階段を下ってゆく足音をハッキリした意識の中で聞いたそうです。
気配がなくなった時に、父はやっと金縛りが解けて、飛び起きて部屋にあったバットをつかみ取り、後を追って階下に降りてゆきましたが、その時に違和感を感じました。足下が滑り、布団の敷いてある畳の周囲がぐっしょりと濡れていることが分かったのです。これは尋常ではないと思った父は扉を開け、二階へ急いで下りました。
しかし、照明を点けなくても二階の店に何の変化もないことはすぐに分かったそうです。得体の知れない者の気配はもうそこにはなかったそうです。父は「あぁ、何かの霊だったのだな」と得心したようです。部屋に戻り、明かりを点けるとやはり敷き布団の周囲がしっかり濡れていることがわかりました。
父は納得したそうです。何故なら、部屋にあったバットは自分が買ったものではなく、元々その部屋にあったこと。先住者達がおよそ半年も持たずにそこから転職していることに・・・。僕が聞いた限りだと、父はこの後、霊の訪問を2回ぐらいは受けたそうです。この後、父は大きな不幸に巻き込まれるのですが・・・。
ひょっとすると、この時の銀座の因果が後々祟ったのかも知れません・・・。
1950年代のジュリアン・ソレル

父は19歳で長崎を飛び出し、銀座のお店(今のCHANELにあった洋品店とBarのコラボ店「じゅりあん・それる」時代)に住み込みで働いていた20代前半の頃の話しです。一階がフランス製の衣料品を売る洋品店で、二階が喫茶Barになっていて、父は二階でバーテンをしていました。三階にあった小さな部屋が父の間借りの住居でした。

当時、店が何時に閉まっていたのかは知りません。でも昭和26~28年当時の「銀座みゆき通り」ですので、遅くまで営業していたと思われます。店が終わりグラスや食器類を洗い終わり、父は二階の広い店から、鉄板の階段を上って小さな6畳ほどの和室に向かいます。そして、何もない部屋で布団を敷いて眠りにつくのですが・・・。

深夜にゆっくりカーンカーンと音を響かせ、薄い鉄の階段を何者かが登って来る気配がしたそうです。父親が「あ、泥棒だ!」と思っていると、金縛りに遭い、全く体が動かなくなってしまったそうです。すると扉にある磨り硝子の小窓からグウッと何者かが覗き込む気配がしたそうです。動けない体に更なる恐怖が襲ったそうです。
昭和47年のジュリアン・ソレル

その覗き込んだ者は扉を開けることなく、部屋に入って来たのです。気丈な父は何とか金縛りを解いて、予期せぬ訪問者と対峙しようと足掻くのですが、やはり体は動かなかったそうです。そして、黒い影は射貫くように父の顔を覗き込みながら寝ている布団の周囲をゆっ~くりと、ミシミシと音を立てて廻ったそうです。父は何とか起き上がって戦おうとしましたが、全く動くことが出来なかったそうです。

そして得体の知れない黒い影は白く浮き出た目で父を凝視しながら、布団の周りを二周ほどすると・・・、また扉の方へ向かい音も立てずにすり抜けました。磨りガラスに黒い影が一瞬映り、今度はカーンカーンと言う階段を下ってゆく足音をハッキリした意識の中で聞いたそうです。
気配がなくなった時に、父はやっと金縛りが解けて、飛び起きて部屋にあったバットをつかみ取り、後を追って階下に降りてゆきましたが、その時に違和感を感じました。足下が滑り、布団の敷いてある畳の周囲がぐっしょりと濡れていることが分かったのです。これは尋常ではないと思った父は扉を開け、二階へ急いで下りました。
しかし、照明を点けなくても二階の店に何の変化もないことはすぐに分かったそうです。得体の知れない者の気配はもうそこにはなかったそうです。父は「あぁ、何かの霊だったのだな」と得心したようです。部屋に戻り、明かりを点けるとやはり敷き布団の周囲がしっかり濡れていることがわかりました。
父は納得したそうです。何故なら、部屋にあったバットは自分が買ったものではなく、元々その部屋にあったこと。先住者達がおよそ半年も持たずにそこから転職していることに・・・。僕が聞いた限りだと、父はこの後、霊の訪問を2回ぐらいは受けたそうです。この後、父は大きな不幸に巻き込まれるのですが・・・。
ひょっとすると、この時の銀座の因果が後々祟ったのかも知れません・・・。
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