ジョーの「境怪世界」

以前に幼少期から中学までの間は夏休みを鹿児島の田舎で過ごしていたことをお伝えしましたが、やはりせいぜい小学校1年生ぐらいの夏休みに撮られた写真ではないかと思います。

それはとても印象的な写真だったのです。そのモノクロ写真は母方の当時大学生だった従兄弟が撮ったものだと思っています。当時はカメラは貴重で一家に一つあるというようなものではなかったのですが、後に使わなくなったジャバラのカメラを貰ったので、恐らくそれで撮られたと判断しています。

写された場所も明確に記憶に残っていたわけではないのですが、考えられる地域は鹿児島の頴娃（えい）の石垣というところです。当時は鹿児島駅からローカル線で1時間ぐらい掛かった母が生まれた土地です。まだ遠縁が居住していて鹿児島に預けられると、そこには何回か訪れました。戸数も10戸ほどの竹林に囲まれた度田舎でした。

海の側の村落でしたが専ら川に行き、非常に冷たく流れの速い川で地元の子ども達と遊んでいました。そして、その夏一緒に来た従兄弟が僕が川遊びをしているところを撮ったのだと思います。そのモノクロプリント自体はすぐに見たものではなく、恐らく数年後か、もっと後に鹿児島に行った時に渡されたと思うのです。　

しかして何故かその写真の中の私は5ｍほどの川幅のある丁度中央に突き出た岩の上にしゃがんでいるのです。しかもその岩というのが数メータ程の滝になって落ちるところにあるのです。更におかしなことに、私はちょっとお洒落な半ズボンのスーツのような服装をしているのです。顔は満面の笑みです。

どうしてそんな急流の、しかも小規模とは言え滝の真上の岩の上になんかにいるのでしょう。従兄弟が今でいうインスタ映えする写真を撮るために私をそこまで運んだ？(笑）とはとても思えないのです。そんなことをしたらとても危険な行為以外の何ものでもありません。私は子どもながらにその写真に違和感を覚えました。1番の違和感・・・そんな服もってない・・。

まぁ数あるモノクロ写真の中の1枚なので、それに執着していたわけではないのですが、何故か何年かごとにその写真のことが妙に気になって乱雑にまとめたアルバムを探して改めて見ると、やっぱりおかしな写真だなぁと思うのでした。以前より幾分近距離からの撮影に見えるのです。不思議に思いながらまた思い出すまでは見ないのですが、また気になってアルバムを探ると、今度は幾ら探してもその写真だけが見つからないのです・・。

あれ？、あの写真は気のせいだったのかな？、と思う時すらありました。勝手に「そうだよな。あの写真変だもんな・・・。」って割り切ってしまうのですが、また数年から5年ほど経つとその写真のことが気になって、探してみるのです。するとあるのですよ！。「あぁっやっぱ気のせいじゃなかった、あるじゃないか」と覗き込むのですが、すると前の印象よりも更にアップな写真になっている気がするのです。

無くなったり見つかったり、そんなことを繰り返して数十年も経ったような気がします。そして、この15年ぐらいはその写真のことを忘れていたのですが、ある切っ掛けで思い出しました。昨年、10月29日(日)、会場は石垣市民会館 中ホールです。あの稲川淳二さんが8年ぶりに石垣島で怪談ナイトをしました。私は初めて生ジュンちゃんを見て来ました。創作怪談も十分に「こわいよ～、わいこ～だよ～」だったのですが、怪談話が終わったその後に実際の心霊写真を解説するコーナーがありました。

スライドで「川の水面から少しだけ頭を出して横向きの顔写真」の解説がありました。それは自殺した男性らしき顔らしいのです。それが・・・何年か経つと、徐々に水面から顔がはっきり出て来て、しかも横顔だったものが段々に正面を向いてくるというのです！。いやはや、これには会場騒然です。確かにその写真は明らかに最初と様相が違うのでした。

その写真を見た時に私は心の中でハッと現れたり消えたりする自分の写真のことを思い出しました。あの写真の中の自分は徐々に大写しになっていった・・・、まぁ私は生きていることですし、なんまいだ～・・・。そして、実は今回もこの記事を書くにあたってアルバムを探してみたのですが、ありませんでした。

一昨年、私の東京の実家は放火されて、アルバムの半分以上も消失してしまいました。いえ、それでもきっともう見つからなかっただろうと思っています。考えれば断舎利をしてもおかしくない歳になってきて、本当に思い出深い写真だけをデータ化してプリントは全て燃やすことにしました。
皆さんはそんな写真をお持ちになっていませんか？。その写真に何かの意味があるのでしょうか？。それではまたお会いしましょう。長くなってすいません。