No1. 走り去る黒い影たち

琉球ジョー

2017年12月25日 23:00

僕は東京・新宿の生まれ育ちでありますが、僕が幼少期の頃、父親が銀座の文房具店から賃貸詐欺で手付金を騙し取られました。殆どの所持金を奪われたため、両親は生活苦のため共稼ぎをしなければならなくなりました。そして僕は2歳になる前に1年ほど母親の田舎(長田町)に1年ほど預けられていました。

その時のことがきっかけで僕は叔母との親戚付き合いが始まり、幼稚園、小学校に入ってからも、夏休みは鹿児島に預けられることが多くなりました。ですので僕の夏の原風景は東京ではなく、昼はうるさい程に蝉がなき、夜はカブトムシがバシバシ飛んでくる鹿児島でした。そう今よりどれほど田舎だったことでしょうか。

当時の家屋は既に老朽化した木造の古民家で、営林署に勤めている叔母だけが住んでいましたが、二階建てで、そこそこの広さはありました。家の玄関に向かうまでの細い路地は、60cmを越える大きなヒキガエルの散歩道でもありました。何回か大きな壺に閉じ込めてみましたが、いつも逃げられていました。

それは幼稚園か小学1年生頃の夏だったと思います。また田舎に預けられていた僕は叔母の家の近所で1人遊びすることにもすっかり慣れ、その日も叔母が帰ってきそうな時間に家に戻りました。僕が玄関の扉を開けると、わさわさというか、ふわふわとした黒い影が何十匹も上がり框の辺りにいて、一斉に二階に駆け上がってゆきました。

「おわっつ!」と、僕は最初にそれを見た時は玄関で立ちすくんでしまいました。幼い頃とは言え今でも目の錯覚やら幻惑だとは、思っておりません。 家に帰る度に見たわけではありませんが、バラバラだった黒い粒が慌てふためいて階上へ逃げてゆくのを一夏に何回か目撃しました。影がいるのは必ず僕が一人で帰った時だけでした。

向こうが逃げているのですから、怖がらなくてもいいのかも知れませんが、それを見た日は何やら怖くて、いつも寝ていた二階ではなく、叔母の部屋で一緒に寝ました。 でも、子供ながらに信じてもらえないだろうと、そのことを話すことはありませんでした。中学生頃まで夏休みの田舎通いは続きましたが、その頃には見なくなりました。

それから、30年以上の時が経ち、まだ幼かった娘とアニメ映画を観ました。それを観た時に、急に鹿児島のあの光景を思い出して愕然としました。そして同時に安堵しました。「ああ、そうか真っ黒くろすけ、って言うんだ」と、それまで妻以外に話したこともなかったのですが、納得がいったのです。はいそのアニメは「となりのトトロ」です。

映画の中で少女達のおばぁちゃんは「ススワタリ」と呼んでいました。それで検索してみましたが、そういう妖怪話しは見つけられませんでした。その正体は黒猫だったり、目がくらんだせいだという説でした。でも、恐らく、宮崎駿氏も同じような体験をしたのではないかなぁ・・・と感じています。逃げてゆく様は今でも目に焼き付いています。

今回は此処までとさせて頂きますが、これが、それから僕が遭遇する数々の不可解な出来事の原点になっていると思います。 あ、余談ですがソッチ系の皆様なら、当然ご存知でしょうが、あの「となりのトトロ」には怖い都市伝説もありますよね~。それは皆さんで調べてみて下さいね。では、次の実話をお楽しみに。

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